ヘアのレンダリングのヒント
 
 
 

ヘアのレンダリングは、Softimage の他のオブジェクトのレンダリングと同様ですが、注意すべき点がいくつかあります。レンダリング対象となるすべてのオブジェクトと同様に、より短いレンダリング時間でより優れた仕上がりを実現するのが目標です。

ヘアの操作をよりすばやく行うために、作業中は多くの「時間のかかる」パラメータに低い値を設定することができますが、実際のレンダリングのテストではこれらの値を高く設定しなければなりません。

一般的なヒントは次のとおりです。これらは、ヘアやファーでより優れた仕上がりを得るために役立つヒントです。

ヘアの本数と適用範囲

  • ヘアの全本数は、レンダリング時間を大きく左右します。希望の仕上がり具合に応じてヘア全体の本数を減らし、その分、根元や先端を太くすることができます(「レンダヘアの太さの設定」を参照)。縮れやよじれをわずかに使用すると、実際の本数よりも多数のヘアがあるように見せることができます。

  • ただし、レンダリングをすばやく実行できるように、最初は比較的太くて少量のヘアを使用し、最終的なレンダリングでヘアを細くして本数を増やすことができます([ヘア総本数](Total Hairs)値。「マップをレンダ ヘア パラメータに接続する」を参照)。ただし、髪束を非常に太くすると髪束が互いに干渉し合い、ちらつきの原因となる場合があります。

  • 希望する見栄えに応じて、[束の密度](Strand Multiplier)を使用し、レンダ ヘアの数を増やしてヘアの適用範囲を最適にすることができます(「レンダ ヘアの本数を増加させる」を参照)。必要に応じて、[根元を広げる](Splay at Root)を使用して多少のまとまり感を演出することも可能です。ただし、一般的には、[束の密度]に大きな値を設定するとレンダリング時間が長くなるため、レンダ ヘアの数を増やす方が適切です。

  • 動物や複雑なヘアの場合は、動物や頭全体に 1 つのヘア オブジェクトを使用するのではなく、複数のヘア オブジェクトを使用します(つまり、複数のクラスタに個別にヘアを適用します)。複数のヘア オブジェクトを作成することによって、スタイリング、テスト、およびレンダリングにかかる時間が短くなります。これは、常に小さなパーツで作業でき、高い柔軟性を得ることができるためです。

  • ヘアをコーミングする場合は、少量ずつ 1 方向に行います。ヘア同士を相互に重ね合わせれば、それほど多くのヘアを使用しなくても、ヘアのない部分を覆うことができます。

  • ウェイト マップを使用すると、キャラクタ上のヘアの表示位置を正確にコントロールできます。たとえば、デンシティ マップ(「レンダ ヘア(密度)を削除する」を参照)を作成して、必要な場所でだけヘアの数を増やすこともできます。これは、動物の頭部のクローズアップなどで有用です。デンシティ マップを使用すると、値が 0 の場所ではヘアが生成されなくなります。ヘアが生成されなければ、レンダリングも行われません。

  • ヘアのセグメント数をできるだけ抑えて最終的なレンダリングを実行しましょう。ロング ヘア、縮れ毛、カール ヘアなどのヘア スタイルを使用する場合は、比較的多数のヘア セグメント(たとえば 20 以上)を必要とします。短いヘアやファーの場合は、低い値(たとえば 8 以下)で最終的なレンダリングを実行しても遜色ありません。

    精度を高くするとレンダリング時間が犠牲になり、セグメント値を大きくするとシーンが重くなります。迅速なプレビューやヘアのスタイリング操作を実行する間は、2 または 5 などの低い値を使用します。詳細については、「レンダヘアの解像度(セグメント)の設定」を参照してください。

ヘアのカラーとテクスチャ

  • 根元のカラーを先端のカラーよりも暗い色にすれば、ヘアの束に奥行きとリアルさを演出できます。これは一般に、ヘアにおけるシャドウ エフェクトの作成や強調に使用されます。

  • 一般に、スペキュラ カラーの値(減衰ではありません)は、暗いヘアの場合はきわめて高く、明るいヘアの場合は低く設定します。実際には、希望のエフェクトに応じて適宜加減してください。

  • ヘアには 2 種類のシェーダを使用できます。

    • 1 つはヘア エミッタ オブジェクト(頭皮など)のサーフェイス シェーダで、離れた場所にあるヘア カラーおよびテクスチャをシミュレートします。これによって、少ないヘアでも見栄えはよくなります。下地となるオブジェクトの表面に、ヘアのような外観のテクスチャ イメージを適用すると、ヘアの量を抑えつつも見栄えが損なわれないため、非常に役立ちます。

    • もう 1 つは実際のヘア シェーダで、レンダ ヘアの見栄えを定義します。

    これら 2 つのシェーダを異なる割り合いで適切に併用すると、レンダリング時間を必要以上に消費せずにきれいに仕上げられます。

白または明るい色のヘアを作成する

リアリティのある白いヘアやファーの作成はかなり困難です。そこでここに考慮すべきいくつかの点を挙げます。

  • 白いヘアは白ではありません。有彩色の灰色です。白にはさまざまな色合いの「オフホワイト」があります。カラーを純白(1)に変えてしまうと、バリエーションが少なくなります。ヘア シェーディングシェーダで[色変位](Color Variation)オプションを使用すると、カラーを微妙に変更できます。

  • カラー スペクトル範囲全体をベース カラーで満たさないようにしてください。スペキュラ カラー(中間色)用の余地を残しておく必要があります。白はフレーム内の他のすべての色より明るくなければならないため、被写体と背景が競合しないようにします。

  • 白いヘアはヘア自体が輝き、その内部ではライトがいたるところで反射します。ディフューズの範囲が非常に狭いので、ヘアのシェーディングはほとんどがベース カラーになります。その他のシェーディングはシャドウから得られます。

    [Hair Gradient Material]シェーダの[ブレンド グラディエント使用](Use Blend Gradient)パラメータ(「ヘアのディフューズ カラーとアンビエント カラーを設定する」を参照)を設定して、大部分を[アンビエント](約 85%)にし、ディフューズ シェーディングのエフェクトを減らすことができます。言い換えると、シェーディングされたヘア(シャドウなし)はベース ヘア カラーになり、明暗のバリエーションはありません。

    シェーディングの残りの影響はシャドウおよびスペキュラ値により計算されます。従来の意味のアンビエントと異なる点は、セッティングがシャドウの濃度に影響しない点です。

  • 非常に透明な髪束を多数使用します([ヘア総本数](Total Hairs)値。「マップをレンダ ヘア パラメータに接続する」を参照)。これにより多くのライトがボリュームを透過するので、見た目がふわふわになります(ふわふわした毛皮を作成する場合)。

  • 同じオブジェクトにヘアのインスタンスを複数適用し、それぞれを異なる密度設定にします(ファーの場合)。あるものは長くてゆるく(硬さが少なく縮れが多い)、あるものは短く、密集し、硬いヘアにします。

透明度

  • 多数の髪束を使用し、透明度を適切に高い値に設定すると、ヘア(特に白色などの明るい色のヘア)の見栄えがよりリアルに表現されます。また、この処理によりライトがヘア ボリュームを通過するため、シャドウを弱める効果もあります。根元の透明度の値を極端に低くすると、ヘアが不透明になり、人口毛髪のように見せることができます。

    プレビューに時間がかからないようにするには、ヘア シェーダで透明度を無効にしてください。

ライトとシャドウ

  • ヘアに使用するライトはできるだけ少なくします。たとえば、シャドウをキャストするライトは 1 個で、それ以外のライトをシーン内で 3 個まで使用するなどです。

  • モーション ブラーを多用するとレンダリング時間が増大するため、モーション ブラーはポスト プロセスで適用するようにしましょう。

  • シャドウのレンダリング負荷も小さくはありませんが、モーション ブラーほどではありません。可能な限り、セルフ シャドウは使用しないようにしてください。

    シャドウ マップを使用することにより、レンダリング時間を短縮しつつシャドウの品質を向上できることがよくあります(「シャドウマップで作成するシャドウ」を参照)。ボリューム シャドウ マップを使用して、透明度やカラー シャドウを正確にレンダリングすることもできます(「シャドウマップで作成するシャドウ」を参照)。

  • シャドウのレンダリングは、最終的なレンダリング時に行います。最良の結果を得るために、ライトの Umbra 値を 0.2 以上に設定してください。

レイトレーシングとアンチエイリアス

  • 通常のシャドウを使用してヘアをレンダリングする場合は、レイトレーシングをレンダリング方法として選択します。シャドウ マップを使用する場合は、レイトレーシングより高速なスキャン ラインを使用できます。

    詳細については、「レンダリングアルゴリズムの選択」(「レンダリング」)を参照してください。また、「エイリアシングの制御」(「レンダリング」)も参照してください。

  • ヘアのエッジのジャギー(ぎざぎざ)を抑えるためにアンチエイリアスを使用します。まずは[最小レベル -1]/[最大レベル 1]などの設定を使用し、必要な品質に到達するまで徐々にしきい値を下げていきましょう。0/2 の設定で良い結果が得られる場合がしばしばあります。

  • フィルタを使用すると、イメージの品質を保ちながらヘアの過度なサンプリングを避けることができます。[フィルタリング]の[タイプ]を[Mitchell]フィルタにし、X/Y サイズを 4/4 サイズで使用すると、イメージの鮮明さをほぼ維持しながら十分なパフォーマンスを得ることができます。

    通常、ヘアの本数は直径のピクセルよりも少ないため、最小エイリアシング レベルを引き上げるとレイがヘアに当たる確率は増大します。

  • また、サンプリングしきい値を RGBA = 0.06 のように設定することもできます。ピクセルあたりのサンプル数を増やすと、統計上、より多くのヘアがサンプリング レイに衝突するため、結果が変わってきます。

  • レンダリングでよい結果を得るために、ヘアのサンプリング レベルは一般的なジオメトリより高く設定します。ヘア専用のサンプリング設定はありませんが、ヘアだけを別個のパスでレンダリングできれば、シーン内の他のオブジェクトに対するサンプリング レベルを低くできます。

  • レンダリング速度を向上させるためには、ヘア BSP の設定(「ヘアのBSPツリーの設定」を参照)は慎重に行う必要があります。プレビューの表示に時間がかからないように、ヘア上に小さいレンダ領域を描画します。