散乱を定義する

 
 
 

このセクションで説明しているパラメータは、「高速サブサーフェイス スキャッタリング フェノメナ」に基づいています。ただし、説明の大部分は、どの高速サブサーフェイス スキャッタリング エフェクトを作成する場合にも当てはまります。

高速サブサーフェイス スキャッタリング エフェクトのスキャッタリング オプションは、シェード オブジェクトの前面サーフェイスと背面サーフェイス上でライトがどのように拡散するかをコントロールします。

前面サーフェイスと背面サーフェイスはカメラの位置に応じて入れ替わるため、スキャッタリング エフェクトはビューに非常に大きく依存しています。原則として、いずれかのサーフェイスが直接照らされたときに、そのサーフェイス上のスキャッタリングが最も目立つようになります。

注:高速サブサーフェイス スキャッタリングにおけるビューの依存関係の影響の 1 つとして、スキャッタリング エフェクトは、カメラの視点から見たときに正しく表示されるのに十分なだけしか計算されない点が挙げられます。その結果、反射サーフェイス(カメラの後ろの鏡など)で見た場合には、多くの場合、オブジェクトの背面サーフェイス上のスキャッタリングにアーティファクトが含まれます。

フロント スキャッタリング

フロント スキャッタリングは、ライトがオブジェクトのサーフェイスの直下およびディフューズ シェーディングの下を通過して拡散する場合に作成されます。

フロント スキャッタリングは、次の 4 つのパラメータでコントロールされます。

  • [カラー](Color)は、フロント スキャッタリングが適用されるライトのカラーを定義します。カラー値を明るくするほど、フロント スキャッタリングがより強く表示されます。

  • [ウェイト](Weight)はフロント スキャッタリングがエフェクト全体にどの程度影響するかをコントロールします。

  • [半径](Radius)は、ライトが前面サーフェイスに沿ってどの程度遠くまで拡散するかをコントロールします。

  • [減衰](Falloff)は、フロントスキャッタリングが適用されるライトの減衰プロファイルをコントロールします。値が大きいほど作成される減衰がシャープになり、値が小さいほどその逆になります。

    減衰値が十分高く設定されている場合は、表示半径が短く見えることがあります。この場合、半径値を上げるとフロント スキャッタリングが滑らかになります。

A

このイメージの牛は、明るい青色のフロント スキャッタリングと赤色のバック スキャッタリングを使用し、ディフューズ ライティングは使用せずにシェーディングされています。

B

フロント スキャッタリングの[半径]値を下げると、オブジェクトの前面サーフェイスでのライトの拡散が小さくなり、フロント スキャッタリングとバック スキャッタリング間でのトランジションがシャープになります。

C

[減衰]値を上げると、フロント スキャッタリングが適用されるライトの減衰プロファイルがシャープになり、フロント スキャッタリングとバック スキャッタリングのブレンドの滑らかさが低下します。これは、特に首で顕著にみられます。

バック スキャッタリング

バック スキャッタリングは、シェード オブジェクトの背面サーフェイスが照らされたときに表示されるスキャッタリングで、ライトは前面サーフェイスで表示されるのに十分な深さだけオブジェクト内で拡散します。

大量のバック スキャッタリングと非常に明るいバック ライトが定義されない限り、通常、バック スキャッタリングは、後ろから照らされたオブジェクトのエッジまたは特に薄い部分でのみ表示されます。

バック スキャッタリングは、次の 4 つのパラメータでコントロールされます。

  • [カラー](Color)は、バック スキャッタリングが適用されるライトのカラーを定義します。カラー値を明るくするほど、バック スキャッタリングがより強く表示されます。

  • [ウェイト](Weight)はバック スキャッタリングがエフェクト全体にどの程度影響するかをコントロールします。

  • [半径](Radius)は、ライトが背面サーフェイスに沿ってどの程度遠くまで拡散するかをコントロールします。

  • [深度](Depth)は、オブジェクト内でライトがどの程度まで深く拡散するかをコントロールします。値を大きくするほど、カメラの視点からバック スキャッタリングが表示されやすくなります。

    注:

    [深度](Depth)を深くすると、エフェクトを滑らかにするためにライトマップ サンプルの数を増さなければならなくなる場合があります。詳細については、「ライトマップ サンプル」を参照してください。

    通常は、[半径](Radius)[深度](Depth)は同じ値に設定する必要があります。

   

バック スキャッタリングの[カラー](Color)は明るい赤色で、[ウェイト](Weight)はかなり高く設定(0.75)されています。ただし、[深度](Depth)値が低く設定(5)されているため、バック スキャッタリングは、オブジェクトが後ろから明るく照らされている領域のエッジでのみ表示されています。

[深度](Depth)を 50 に増やすと、バック スキャッタリングはオブジェクトのさらに広い範囲にわたって表示されます。

   

[深度](Depth)を深くし、[カラー](Color)値の赤色のコンポーネントを明るくすると、バック スキャッタリングがさらに明るくなります。

最後に、[ウェイト](Weight)を 1 に増やすと、バック スキャッタリングが表示されている部分がすべてさらに目立つようになります。

散乱のバイアス

[バイアス](Bias)パラメータを使用すると、バイアス値が正か負かに応じて、サブサーフェイス スキャッタリング エフェクトを前方スキャッタリングまたは後方スキャッタリングに調整できます。

  • 前方スキャッタリングとは、前方に拡散される背面サーフェイスのライトが増えることです。正の[バイアス](Bias)値は、前方スキャッタリングを重視します。

  • 後方スキャッタリングとは、後方に拡散される前面サーフェイスのライトが増えることです。負の[バイアス](Bias)値は、後方スキャッタリングを重視します。

通常は、最終的なスキャッタリング エフェクトを細かく変化させるために、小さな値(-0.1~0.1 の範囲)を使用します。

A

このイメージの牛は、青色のフロント スキャッタリングと赤色のバック スキャッタリング(どちらの[ウェイト]も 1 に設定)を使用してシェーディングされています。ディフューズ ライティングは使用されていません。[バイアス](Bias)を 0 に設定すると、スキャッタリングが均一になります。

B

[バイアス](Bias)を 0.5 に設定すると、前方に拡散する背面からのライトが増えて、フロント スキャッタリングがさらに目立つようになります。

C

[バイアス](Bias)を -0.5 に設定すると、後方に拡散する前面からのライトが増えて、バック スキャッタリングがさらに目立つようになります。

ライトマップ サンプル

[ライトマップ サンプル]パラメータは、レンダリングするレイごとにライトマップをサンプリングする回数をコントロールします。これは、斑点が表示された場合にスキャッタリング エフェクトを滑らかにするために役立ちます。

微妙なスキャッタリングについては、この値を特に高く設定(128 以下)する必要がありますが、強く表示されるバック スキャッタリングについては、値を少しずつ大きくする必要があります。サンプル数を増やすとレンダ時間が長くなります。ただし、比較的高い値(1024 以上)を使用し始めないとその影響は確認できません。最高の結果を得るためには、2 の乗数(32、64、128、256 など)ずつサンプル数を増やします。

A

このイメージの牛は、紫色のフロント スキャッタリングと黄色のバック スキャッタリング(どちらの[ウェイト]も 1 に設定)を使用してシェーディングされています。ディフューズ ライティングは使用されていません。[ライトマップ サンプル](Lightmap Samples)は 64 に設定されており、明らかに低すぎます。

B

[ライトマップ サンプル](Lightmap Samples)を 256 に設定すると、結果が幾分滑らかになりますが、まだ目に見える斑点がかなり残っています。

C

[ライトマップ サンプル](Lightmap Samples)を 1024 に設定すると、まだ牛の頭にほんの少し斑点が残っているものの、十分に滑らかな結果が作成されます。