コースティクスを使用してシーンをレンダーする

 
 
 

コースティクスを使用してレンダーするには、特定の設定またはアトリビュートをオンにする必要があります。最初に設定するコースティック関連のアトリビュートは次の 2 つです。

最初に既定の設定でこれらのアトリビュートを使用してシーンをレンダーし、レンダーしたイメージを確認します。その後、レンダーしたイメージと前のレイ トレーシング レンダリングを比較します。コースティクスを使用したレンダリングを何度も行ううちに、最初に使用すべき設定がわかるようになります。

コースティクスのプリセットをオンにするには

  1. レンダー設定(Render Settings)ウィンドウで精度(Quality)タブを選択し、精度プリセット(Quality Presets)プレビュー: コースティクス(Preview: Caustics)に設定します。

    これで、コースティクスの質を制御するプリセットがオンになります。

  2. レンダー設定(Render Settings)ウィンドウを閉じます。

mental ray for Maya ではフォトンを使用してシーンのコースティック エフェクトをシミュレートします。フォトンはシーンの光源から放出されるエネルギーの小さなパケットです。フォトンは透明なオブジェクトでは屈折し、反射率の高いサーフェスでは反射しながらシーン内を進みます。レンダラはフォトン放出による照明をフォトン マップというファイルに記録します。全体的なコースティクスのシミュレーションは、フォトンの計算結果によって決まります。

スポット ライトからは光だけでなく、コースティクス フォトンも放出されます。全体的なコースティクス エフェクトは、フォトンの計算結果によって決まります。

コースティクスのライティング設定をオンにするには

  1. ハイパーシェード(Hypershade)で spotLightShape1 のアイコンをダブル クリックします。
  2. アトリビュート エディタ(Attribute Editor)で、spotLightShape1 タブをクリックして、スポット ライトのライティング アトリビュートを表示します。
  3. mental ray セクションを開き、コースティクスとグローバル イルミネーション(Caustic and Global Illumination) アトリビュートを次のように設定します。
    • フォトンの放出(Emit Photons): オン
    • フォトンの強度(Photon Intensity): 8000
    • コースティクス フォトン(Caustic Photons): 10000
  4. アトリビュート エディタ(Attribute Editor)を非表示にします。

コースティクスを使用してシーンをレンダーする

すでにライトはコースティクス フォトンを放出するように設定され、コースティクスのプリセットが選択されており、コースティクスを使用してイメージをレンダーする準備は整っています。

コースティクスを使用してシーンをレンダーするには

  1. レンダー ビュー(Render View)ウィンドウで前のレンダーのやり直し(Redo Previous Render)アイコンをクリックします。
  2. イメージのレンダリングが完了したら、イメージを維持します(Keep Image)アイコンをクリックします。
  3. レンダー ビュー(Render View)ウィンドウの下部にあるスクロール バーを左右にドラッグして、今回のレンダリング イメージと前にレンダーしたイメージを比較します。

    このイメージが前のイメージと異なるのは、次の点です。

    • ボトルが前より不透明になっています。このことから、適切な数の屈折が適用されていないことが考えられます。レイ トレーシング屈折レベル(Raytracing Refraction Level)の設定を大きくする必要がある可能性があります。別のプリセットを選択すると(制作からプレビュー(Production to Preview))、屈折レベルが変わります。
    • ボトルのすぐ前にあるテーブルの表面に光のスポットができています。これはフォトンの質の設定を調整することで修正できます。
    • シャドウの中に目的のコースティクス エフェクトが表れていますが、あまり目立ちません。ボトルの表面で屈折するライトによって、明るい部分がさらに目立るようにする必要があります。

屈折レベルを調整する

屈折レベルの設定が小さすぎると、光線は一部のサーフェスだけで屈折され、レイ トレーシングの際に半透明なサーフェスがリアルに見えません。このため、半透明に見えるべきオブジェクトが不透明になってしまいます。

屈折(Refractions)の設定を大きくすると、光線の屈折回数が適切になり、レンダラでガラスのサーフェスを通して見える部分を正しく計算できるようになります。

次の手順では、屈折の設定を変更して、レンダーしたときにボトルが半透明に見えるようにします。

屈折レベルを大きくするには

  1. レンダー設定(Render Settings)ウィンドウで精度(Quality)タブを選択し、レイ トレーシング(Raytracing)アトリビュートを開きます。
  2. レイ トレーシング(Raytracing)セクションを次のように設定します。
    • 屈折(Refractions): 6
    • 最大トレース深度(Max Trace Depth): 8

    屈折(Refractions)の設定では、光線の屈折可能な回数が設定されます。この設定が小さすぎると、光線は一部のサーフェスしか通過できません。最大トレース深度(Max Trace Depth)の設定では、屈折(Refraction)反射(Reflection)の合計回数の上限が設定されます。たとえば、この値を 8 に設定すると、反射を 2 回、屈折を 6 回行うことができます。

フォトンはレンダリングの際に光線と同じように屈折します。コースティクス フォトン(Caustic Photons)屈折(Refractions)設定を大きくすると、レンダラでボトルに適用するコースティクスを正確に計算できます。この場合、コースティクス フォトンの屈折(Caustic Photon refraction)設定とレイ トレーシングの屈折(Raytracing refractions)を一致させることをお勧めします。

フォトンの屈折設定を大きくするには

  1. レンダー設定(Render Settings)ウィンドウで、間接ライティング(Indirect Lighting)タブを選択します。
  2. フォトン トレース(Photon Tracing)セクションを次のように設定します。
    • 最大フォトン深度(Max Photon Depth): 6
    • フォトンの屈折(Photon Refractions): 6

    最大フォトン深度(Max Photon Depth)の設定では、コースティクス フォトン(Caustic Photons)屈折と反射(Refraction and Reflection)計算の上限を設定します。フォトン の屈折(Photon Refractions)の設定はレイ トレーシングの屈折(Refractions)設定と似ていますが、コースティクス フォトン(Caustic photons)の屈折を設定するものです。レンダー設定(Render Settings)ウィンドウを閉じます。

コースティクスの輝度を上げる

フォトンの輝度(Photon Intensity)を大きくすると、ボトルのシャドウに表れる屈折されたコースティクスの明るさが増します。

フォトンの輝度を大きくするには

  1. ハイパーシェード(Hypershade)ウィンドウで spotLightShape1 のアイコンをダブル クリックして、スポット ライトのアトリビュートを表示します。
  2. このライトのコースティクスとグローバル イルミネーション(Caustic and Global Illumination)アトリビュートを次のように設定します。
    • フォトンの強度(Photon Intensity): 36000

シーンをレンダーするには

  1. レンダー ビュー(Render View)ウィンドウで前のレンダーのやり直し(Redo Previous Render)アイコンをクリックし、イメージをレンダーします。
  2. レンダーが完了したら、レンダー ビュー(Render View)ウィンドウのイメージを維持します(Keep Image)アイコンをクリックしてこのイメージを保存します。
  3. 今回レンダーしたイメージと前にレンダーしたイメージを比較します。

    ガラスの透明さが一層リアルになっています。また、ボトルのシャドウのコースティクス エフェクトがはっきりしています。ただし、ボトルの前のサーフェス上にある光のスポットが前よりも強くなっています。これは、コースティクスの質が低く設定されているために生じています。

コースティクスの質を調整する

シーン内のコースティクス エフェクトの質は、主にフォトンの数、サンプリングの精度、およびサンプリング領域の半径によって決まります (すでにグローバル イルミネーション(Global Illumination)のチュートリアルについて学習済みであれば、類似点にお気づきかもしれません)。

次の手順では、レンダー設定(Render Settings)ウィンドウとアトリビュート エディタ(Attribute editor)に戻り、コースティクス エフェクトに影響を与える質のアトリビュートの値を大きくします。

コースティクスの質を向上させるには

  1. レンダー設定(Render Settings)ウィンドウで間接ライティング(Indirect Lighting)タブをクリックし、コースティクス(Caustics)セクションを展開します。コースティクス(Caustics) アトリビュートを次のように変更します。
    • 精度(Accuracy): 900
    • 半径(Radius): 1.5

    精度 の設定によって、入力したサンプリング ポイントでコースティクスの強度(Caustic intensity)を定義するために評価するフォトンの数が決まります。また、半径によって、特定のサンプリング ポイントの周辺領域のサイズが決まります。サンプリングするフォトンの数が多いほど、最終イメージのコースティクス エフェクトがよりリアルになります。

  2. レンダー設定(Render Settings)ウィンドウを閉じます。

シーンに放出されるコースティクス フォトンの数を増やすと、コースティクス エフェクトの質も向上します。コースティクス フォトンの数を大きくすると、レンダー処理の最初に作成されるフォトン マップの密度も増します。フォトンの数を増やすにつれて、コースティクス エフェクトはスムーズになります。

注:

コースティクスの質とフォトンの設定を大きくすると、レンダリング時間も長くなります。こうした設定は、目的のイメージ画質を実現できれば十分であるため、レンダリング時間に影響が出るほど値を上げる必要はありません。これらの設定を決める際にはテスト レンダリングを行うことをお勧めします。

コースティクス フォトンの数を増やすには

  1. ハイパーシェード(Hypershade) ウィンドウで spotLightShape1 のアイコンをダブル クリックします。
  2. コースティクスとグローバル イルミネーション(Caustic and Global Illumination)アトリビュートを次のように設定します。
    • コースティクス フォトン(Caustic Photons): 50000
  3. レンダー ビュー(Render View)ウィンドウで前のレンダーのやり直し(Redo Previous Render)アイコンをクリックします。
  4. イメージのレンダリングが完了したら、イメージを維持します(Keep Image)アイコンをクリックして、前にレンダーしたイメージと今回のイメージを比較します。

    このイメージでは、前のイメージと比較してボトルの前にある明るい部分が少なくなっています。また、ボトルのシャドウのコースティクスがよりはっきりと均一に見えます。